冬季うつ病と高照度光療法

光療法推進委員会

冬季うつ病と高照度光療法

冬季うつ病の治療は、高照度光療法が第1選択となります。投薬よりも効果が高いとされています。

冬季うつ病は、光療法で70%の患者に何らかの効果が得られているとされていますが、当委員会が行った結果では、90%以上の患者に顕著な効果が現れており、一般に言われている値よりもかなり高くなっております。

情報元 要約とコメント
臨床精神医学 
第35巻増刊号 2006
「高照度光療法」

大川 匡子氏、藤村 俊雅氏
滋賀医科大学睡眠学講座

高照度光療法は、当初、冬季うつ病(季節性感情障害)や概日リズム睡眠障害に有効であることから知られていましたが、その他にも、老年性の睡眠障害や認知症性疾患で見られるせん妄や、妊婦のうつ病、月経前症候群に対する有効性も示されてきていることが紹介され、極めて幅広い応用範囲を持つ治療法であることが紹介されています。

興味深い記述として、冬季うつ病(季節性感情障害)に対する抗うつ効果の考察において、高照度を浴びるとセロトニン機能が上昇することが確認されており、その他の事象も踏まえて、高照度光療法は、セロトニン神経系と介して効果を発揮していると考えられていることが紹介されています。

これに関連して、最近では、うつ病(非季節性うつ病)に対しても高照度光療法が単独で抗うつ効果が認められたという報告が見られており、うつ病に対しての適用も検討されてきていることが紹介されています。

また、従来より高照度光療法の安全性、副作用の無さは認められていましたが、あらたに、10,000ルックスの照度で5年間にわたり、のべ1,250時間の照射を行った研究でも重大な副作用は出現しなかったことが紹介されており、再度、安全性が確認されたことが紹介されています。

日本医事新報 
No.3946 1999年12月11日
「季節性感情障害の診断と治療」

坂元 薫氏
東京女子医科大学精神医学

冬季うつ病(季節性感情障害)に関して、その最初の発見から、診断、臨床、疫学、長期経過、季節性の変化・喪失、光療法の効果と有効性、冬季うつ病の原因の仮説などに渡り、非常に広範囲に網羅的にカバーされています。

1999年に発刊ということもあって、現在では明確になっている点も含まれていますが、一つ関心のある情報として、うつ病で外来を訪れた初診患者の中で、冬季うつ病患者がどの程度含まれていたかを、日本国内の緯度別にまとめた図が掲載されています。

これによると、秋田県が断トツに高く、それに次いで札幌市が高いという結果となっており、その他の緯度に比べて明らかな違いがあることが見て取れます。

冬季うつ病治療の海外で行った症例

冬季うつ病徴候者に対して、「午前と午後に光療法を行った場合の効果に違いがあるか?」を調査した文献です。

研究者:  D.H.エーヴリー、D.キンザー、M.A.ボルテ、C.ヘレクソン
精神医学および行動科学の部、ワシントン大学医学部、アメリカ合衆国
提出先: アクタ・サイキアトリカ・スキャンディナビカ

目的

冬型の季節性感情障害徴候者(冬季うつ病症者)が、光療法を仕事場で実施した際、
仕事上に及ぼす気分、活力および集中力の影響を調査。

光療法を行う際、最も効果的な時間はいつか? 午前と午後のどちらが効果的か?

内容と方法

冬季うつ病の基準をクリアし、グローバル・シーズナリティ・スコアーの点数が
6点以上だった31名により実行。

選ばれた31名は昼間仕事をし、ブライトライトによる光療法を仕事場で実施。

被験者はSAD徴候版(SIGH-SAD)(ウィリアムズ、1988年)、ハミルトン・うつ度
測定スケールに基づいたインタビュー・ガイドとシーズナル・パターン・アセスメント(SPAQ)の
アンケートの答え、点数が12点以上だった者のみ。

実験期間 1999年1月~3月
実験内容

実験期間の最初の週に光療法を行わず、週の終わりに2組に割り当てられた。

1組は午前中(7時から12時の間の2時間)に光療法を行い、
もう1組は午後(12時から16時の間の2時間)に行った。

実験期間の最初の週に光療法がどのくらいの効果があると想定できるのか
被験者の意見を収集。

実験期間の最終の週に光療法がどれ位の効果があったか被験者の意見を収集。

最初の週、および光療法を行った1週目、2週目の終わりに、被験者に対し、
精神病医によるSIGH-SADのテストを実行。

質問は、光療法の副作用に関して出された。被験者は、毎日記入用紙に光療法を
実施した回数を記録。

除外対象:

  • 心臓病、肝臓病、腎臓病、呼吸困難、内分泌系障害、神経病、血液病の者。
  • 季節の変わり目に敏感な目の病気や、高照度照射器具の光によって悪化する
    可能性がある 目の病気を持っている者。
  • 失明および網膜変性の家族歴がある者。
  • 近親の死別といった心理的ストレスを経験している患者。
  • 実験の1か月前以降に精神的な薬物の治療を受けた者。
  • 抗ヒスタミン剤、充血除去剤、アスピリン、食欲抑制薬あるいは睡眠薬を定期的にとっている者。
  • 手続きの後、実験後に起こる可能性がある副作用を説明し、それに関して被験者は了解した。
  • 被験者は憂うつさを除いた、医療的または精神的な問題を抱えていない事を確認する
    インタビューを受け、目の検査および身体検査を行った。
結果
  • 光療法を午後に行った被験者と、午前に行った被験者は、
    年齢、性別、グローバル・シーズナリティ・スコアー、朝夜アンケートの得点、
    またSAD徴候の度合いがほぼ同じであった。
  • 午前のグループは、光療法を平均9時26分に約48分間行い、午後のグループは
    平均15時20分に約43分間行った。
  • 光療法を行って2週間後、午前と午後のグループに様々な面で明らかな改善が見られた。
  • 午前に光療法を行った内の16人中9人、午後に光療法を行った内の14人中7人が
    効果的だと述べた。
  • 光療法を実施し、気分、活力、注意力、能率が改善した。
  • 光療法の間帯は効果を左右しない。
  • 光療法の副作用はほぼない。
  • 被験者の半分以上がSAD徴候テストで50%以上の減少。(HDRS-21およびSAD SUBSCALE)
SAD徴候テストの結果
SAD徴候テストの結果
気分テストの結果(VAS- score100mm)
気分テストの結果(VAS- score100mm)
活力テストの結果(VAS-score 100mm)
活力テストの結果(VAS-score 100mm)
注意力テストの結果(VAS- score100mm)
注意力テストの結果(VAS- score100mm)
効率テストの結果(VAS-score 100 mm)
効率テストの結果(VAS-score 100 mm)
目覚めのテスト結果(VAS-score 100 mm)
目覚めのテスト結果(VAS-score 100 mm)

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