「うつ病よサラバ!脳が変わる最新治療」 NHKためしてガッテン

光療法推進委員会

「うつ病よサラバ!脳が変わる最新治療」 NHKためしてガッテン

最近、NHKからうつ病をテーマとした番組放映が連続している。それだけうつ病は現代社会の中で身近な問題となっていることがうかがえる。

  1. NHKスペシャル「うつ病治療の常識が変わる」(2009年2月22日)
  2. NHKクローズアップ現代「抗うつ薬の死角~転換迫られるうつ病治療~」(2009年06月1日)
  3. NHKためしてガッテン「うつ病よサラバ!脳が変わる最新治療」(2009年06月17日)

特に、2009年2月22日に放映されたNHKスペシャル「うつ病治療の常識が変わる」では世の中に大きな波紋を広げ話題を呼んだ。内容の是非よりも、それだけ大きな国民の関心を引いて世論に火をつけた功績は大きい。

そして、今回(2009年06月17日)、ためしてガッテン「うつ病よサラバ!脳が変わる最新治療」にて、うつ病治療の在り方の一面にメスを入れた。

”うつ病はこころの風邪”の意味

うつ病は心の風邪と言われているが、うつ病患者の立場から見ると、大変に不快な言葉であることが指摘されている。もともとこの言葉には、誰もがかかり得る病気だが、風邪と同じで必ず直るという意味が込められていた。

しかし、うつ病が風邪と決定的に違うのは、薬を飲めば“即”治るわけではなく、長期間かけて序々に快方に向かうという点である。また、抗うつ薬の有効性は60数%と言われており、効果の出ない人の割合も高い(筆者追記事項)。

ここまでの内容は同意できる。
しかし番組では、抗うつ薬が効かない理由を、薬との相性と断定しており、相性の良い薬を見つければ治るとの見解をほぼ示していた点がひじょうに気にかかる(後述)。

ただ、”うつ病はこころの風邪”との誤解を生みやすい表現を修正し、うつ病治療には長い期間がかかるものだということを具体的に説明し、うつ病の回復には“少しずつ楽になっていく”という実感を得ることが最も重要なのだとの結論には大変賛同できた。

うつ病の回復時期には大きな波がある。決して右上がりの回復過程をたどらない。少し良くなったかと思うと急にどん底に突き落とされるという繰り返しを何度も経て、少しずつ良くなっていくことをわかりやすく説明していたので、長期にうつ病を患っている方にとっても勇気づけれる説明であった。

抗うつ薬は万能か?

上記でふれたように、番組では、抗うつ薬が効かない理由を薬との相性と捉えており、相性の良い薬を見つければ治るとの見解をほぼ示していたが、これは議論の分かれる内容であろう。

具体的に、抗うつ薬の効果の確認に3ヶ月、抗うつ薬の種類が10数種類という数字をあげ、全部をためすにはそのかけ算の期間が必要との認識を示していた。そのため、できるだけ早期に医師の診察を受けて、抗うつ薬の服用を早期に開始して自分にあった抗うつ薬を見つけることを薦めるとの立場をとっていた。

果たしてそうであろうか?
抗うつ薬をすべて試せば効果のある抗うつ薬を必ず見つけることができるのであろうか?

日本うつ病学会理事長の野村総一郎先生は、抗うつ薬はうつ病治療法の一つに過ぎないとクローズアップ現代の番組の中で明言し、抗うつ薬の限界を認めていた。また、筆者の調べた限り、すべての抗うつ薬を試せばその中に効果性の高いものが必ず見つけられるとの研究結果は得られていない、あるいは、医療界の共通認識とはなっていない。現在の医療界の共通認識は、抗うつ薬が効かない患者がある程度はいると捉えているのが正解である。

この点が偏った報道となってしまっていることがひじょうに残念だ。

真実と向き合ってこそ...

もし、抗うつ薬で必ずうつ病から回復できるのであれば、100万人を越えると言われるうつ病患者数は、時間はかかっても確実に減少傾向を示す”徴候”が察知できるハズである。ところが、実際にはうつ病患者は増え続けているという現実を見ると、その治療法自体に問題が潜んでいると考えるのが自然ではないか。

1999年5月に大きな期待と共にSSRIが初めて発売されてから丁度10年が経過した。
いくら途中で治療を諦めてしまう人が多いと言っても、何らかの減少傾向の徴候は捉えられてしかるべきだ。それが逆の増加傾向を示しているとはどうゆうことか。

さらに百歩譲って、必ず自分にあった抗うつ薬が見つけられると仮定しても、それを見つけるのに数年も要するのであれば、はたしてそれは適切な治療法と言えるのだろうか?

番組でも紹介していたが、うつ病は脳(海馬)の萎縮を引き起こす場合がある。長期化すれば取り返しのつかない状況に患者を追い込んでしまう危険性を秘めていることを考えると、短期で抗うつ薬の効果を得られない患者への対処方法を別途考えるべきだろう。

抗うつ薬は必要不可欠の治療薬であることは間違いない。
しかし、抗うつ薬に偏った治療法の限界を、もっと明示的に指摘し、医療界に問題提起すべきだろう。イギリスでは、どうして心理療法主体の治療を重視するようになったかや、抗うつ薬の効果性が60数%といわれているが、それは完治率を表しているのではなく、ある程度以上の改善効果が見られる割合を示していることの説明などを行って、より深い議論にしてもらいたかった。

この抗うつ薬の限界をうやむやにしたまま番組が進行したことに疑問を感じた方や腑に落ちないと感じた方も多かったのではないか。サポートを行っている経験からすると、特に、うつ病を実際に経験した方ほどそう感じる度合いは強いと確信する。

NHKは医療を背負っているわけでもなく、患者の立場を保護する機関でもないので、問題提起として終わってもそれは十分に受け入れられたはずだ。”事実”としっかり向かい合うこと無しに、発展的な議論や前進には至らないことは一般的に真理である。

その他の治療法

抗うつ薬以外の治療として、認知行動療法と運動療法が紹介された。

回復が十分進んだ段階では、認知行動療法や運動療法が有効であるとの説明であった。この説明は、これまでのメディアではうまく説明されていなかった。NHKスペシャル「うつ病治療の常識が変わる」では、認知行動療法を無条件に突出させていたが、この番組では回復が十分に進んだ段階で適用すべき治療法として紹介され、正しく修正されていた点は二重丸である。

ただ、うつ病の最悪期の治療法の紹介がなかったのが残念だ。これは前記で指摘した抗うつ薬の限界と深く関連している。

傾聴主体の心理療法、断眠療法、光療法、などなど、うつ病医療全般には広がってはいなくても、著名な大学病院やいくつかの病院で実際に通常治療として実施されている治療法や、海外で実績を積んでいる治療法などをもっと紹介しても良かったのではないか。回復できずに困っている患者にとっては、藁をつかむ貴重な情報となる場合も十分にあり得るのだ。

同じNHKの「おはよう日本」(2009年2月24日)では、季節性の生活習慣病(糖尿病など)の治療法として低照度光療法を紹介していたが、これは上記にあげた治療法に比べると研究段階の治療法である。その紹介事例と比較すると、恐れることなく、もう一歩踏み込んでいろいろな治療法を紹介してもらいたかったと感じるのは筆者だけだろうか。

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