高齢者の不眠と睡眠障害
人間は高齢になると不眠の症状が出やすくなります。
具体的には、夜中に目が覚めやすく、逆に昼間に居眠りをしてしまがちになり、早朝から起きてしまって寝られないという症状です。
人間が本来持っている生体リズムの働きが弱ってくるためと言われています。
生体リズムというのは、単に、
- ①睡眠と覚醒だけではなく、
- ②体温や血圧といった自律神経系のリズムも含み、さらに、
- ③身体の生理機能、ホルモン分泌、物質代謝などの副腎皮質ホルモン系
と、ほとんどすべての人間の機能①②③が、概日リズムという一日の規則正しいリズムに従って動いています。そして、この重要なリズムの大元になっているのが生体リズム、あるいは、生体時計というものです。
高齢になると、どうしても身体の働きが弱くなったり、活動不足になったりするため、これらの働きが弱くなってきます。その結果、早く眠くなって、早すぎる時間に起きる不眠症状が現れてきます。これは、①②③と関連して、睡眠と覚醒のメリハリが小さくなり、、生体リズム自体が十分に働かなくなってくるためにおきます。
ここで高齢者の不眠の一つの問題として、寝られないからと言って睡眠薬を使いにくいという点があげられます。なぜかというと、睡眠薬を使うと意識がもうろうとした状態でトイレなどに行くとき、ちょっとした段差などで転倒することがあるからです。骨折すれば、そのまま寝たきりの生活を余儀なくされ、ますます生体リズムを活性化する選択範囲が狭まって難しくなります。また、家族の介護負担は一気に重くなってしまいます。
また、睡眠薬を使うと意識がもうろうとして覚醒状態に戻りににくく、痴呆症に発展するという可能性があるという症例も報告されています。したがって、これらの理由で、医師は高齢者に睡眠剤を出しにくいのです。一歩間違えると大変な事態になる可能性を秘めているからです。
高齢者の不眠対策
高齢者の不眠対策としては、昼間の活動量を増やすことが基本です。、軽い運動をしたり、人との接触を増やすことがあげられ、デイサービスなどを積極的に活用するのも良い方法といわれています。
NHKの「ためしてガッテン」では、高齢者向けに考案されたイスに座ったままできる「夕方体操」を紹介しています。毎日午後5時頃から30分間程度行うと効果的だそうです。これは、夕方から体温が下がってメラトニンが分泌されて睡眠モードになり始めるのを後にずらす働きがあり、身体を活性化させてメリハリをつける両方の効果があります。
光療法も高齢者の不眠に対してその有効性は確認されており、それに関する文献はかなり出されています。昼間の活動量を増やすことに加えて、光療法を並行して行えば、その相乗効果を期待できるので、よりメリハリの聞いた概日リズムを得られる可能性が高くなります。
また、光療法の優位な点としては、動くことが出来なくて活動が制限されている方の場合でも適用できるので、非常に広範囲の高齢者の方が利用出来るということがあげられます。
人間の持つ生体リズムは、光に強く反応するので、光療法を上手く使えば、高齢者の不眠や様々の問題を解決できる可能性があるのです。
詳細情報:
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概日リズム睡眠障害