冬季うつ病の予防と対策1: セロトニン
冬季うつ病の予防や対策・治療を考える上で、セロトニンを中心に置いて考えると理解しやすくなります。
冬季うつ病の原因は、セロトニン神経機能の低下であるとる説が有力です。セロトニンが不足するとうつ気分・過眠・過食が起きやすくなります。実際、冬季うつ病患者だけではなく、健常な人でも冬場になるとこの傾向が見られます。高照度の光にはセロトニン神経機能を活発する性質があるので、高照度光療法が冬季うつ病の治療に使われています。
セロトニンについてもう一歩踏み込んで、トリプトファンや甘い物・炭水化物との関係を見てみると、冬季うつ病の予防・対策・治療を効果的に行う助けになります。
- セロトニン
- トリプトファン
- 甘い物、炭水化物
セロトニンとトリプトファン
光によりこのセロトニン神経機能を活発化してセロトニンを合成するためには、セロトニンの原料となるトリプトファンという必須アミノ酸が必要です。通常はトリプトファンが不足することはありませんが、冬季うつ病の症状を持っている方の場合、十分な量のトリプトファンを補充する必要があります。
逆に、光療法を実施してもトリプトファンが不足している状態ではセロトニンを合成することができず、十分な効果が得にくくなります。実際、光療法の効果を得られている患者でも、トリプトファンが含まれていない食事に切り替えると冬季うつの症状が再発することが確認されています。
トリプトファンを多く含む食物は、バナナ、カボチャ、豆乳、プロセスチーズ、豆乳などがあり、冬季うつ病の症状が発生する時期にはできるだけ多く摂取するようにすると、予防や対策として有効と言えます。
トリプトファンと甘い物・炭水化物
冬季うつ病の患者に特徴的な症状として、甘い物や炭水化物を多量に食べたくなるという性質があります。これは何故でしょうか。
セロトニン合成のためには、その原料となるトリプトファンを十分に摂取することが重要であると説明しましたが、更にいうと、摂取したトリプトファンが体内(脳内)で十分に吸収される必要があります。
ここで炭水化物が重要な働きをします。炭水化物を摂取するとトリプトファンが脳内で吸収される割合が高くなるのです。つまり、トリプトファンに加えて炭水化物や甘い物を多く摂取すると、脳内にトリプトファンが多く吸収され、結果的にセロトニンが多く生成されることになるのです。冬季うつ病患者が炭水化物や甘い物を多量に食べたくなるのは、本能的に自己防衛的な行動をとっていると言えます。
以上、セロトニンとトリプトファン・甘い物・炭水化物の関係を説明しました。冬季うつ病には光療法が有効ではありますが、その効果性を高めるためには、トリプトファンと甘い物・炭水化物も摂取してセロトニンの生成を促進する必要があるわけです。