青色光の危険性

光療法推進委員会

青色光の危険性

青色光は覚醒度を上げる効果はありますが、同時に重篤な眼の傷害の危険性も伴います。週刊文春2010年7月1日号に、『iPad「青色光」が心と体を蝕む』という記事が掲載され、主に夜にLEDの光を浴びる問題が指摘されましたが、実は夜だけではなく他の危険性も指摘されています。最近、青色で光療法を行う器具もあるのでその危険性を調べてみました。ちなみに、青色光網膜傷害は、「障害」ではなく「傷害」と書きます。

紫外線による傷害の可能性につていは広く知られていますが、波長が紫外線に近接している青色光も人体に傷害を及ぼす可能性があることは、これまで一般の人にはあまり知られていませんでした。ところがLEDの登場により、白色LEDの光がこれまでの光源に比べて青色成分が含まれる割合がひじょうに高いため、専門家によって問題が指摘されています。さらに、問題の青色光そのものを発光する青色LEDの場合はさらにその危険性が指摘されています。

参考情報: 加齢黄斑変性, 青色光網膜傷害

LED照明の生体安全性

照明学会誌 4月号(VOL.94 NO.4 2010)に、「LED照明の課題(生体安全性)」(日本照明委員会著)という文献が掲載され最新情報がまとめられており、人体への影響は次の3点について述べられています。

  1. 眼の青色光網膜傷害
  2. 皮膚への生理的ダメージ
  3. 覚醒レベル、自律神経機能、体内時計、メラトニン分泌などへの生理的影響(夜間の生理作用)

生体安全性に関するこれまでの研究結果や評価方法が紹介されていますが、この内容から一般生活の中での危険の度合いを読み取るのはやや難しいです。敢えて一言でまとめると、青色LEDによる青色網膜傷害への影響は要注意、白色LEDの皮膚へのダメージは心配無し、白色LEDや青色LEDの夜間の生理作用には影響有りと読み取れます。

特に青色LEDについては、「特に青色LEDは青色光による網膜傷害の作用スペクトルに近い分光特性をしているので危険度が高く、青色光は眩しさを感じにくいため危険を感じにくい。」と明確にその危険性を指摘しています。

また、同じ眩しさの場合、青色LEDの青色光網膜傷害のリスクは水銀灯に比べて約23倍高く、露光限界は100ルクスで約60秒であることが紹介されています。これが青色LEDを直視する場合や直視に近い場合はさらに一気に危険度が高まるため、日常生活のなかで危険な状態になりうることが容易に読み取れました。

文献紹介

  • 「青色光による網膜光傷害」
    植田 俊彦
    昭和大学医学部眼科学講座

  • 「青色発光ダイオード光による網膜傷害」
    小出 良平 , 植田 孝子 , DAWSON William W , GM Hope , ELLIS Ann , SOMUELSON Don , 植田 俊彦 , 岩淵 成祐 , 福田 紹平 , 松石 美応 , 安原 一 , 小沢 哲磨 , ARMSTRONG Donald
    日本眼科學会雜誌 105(10), 687-695, 2001-10-10

  • 「青色光による網膜傷害と眼底の冷却効果」
    森 圭介 , 米谷 新 , 林 直樹 , 阿部 友厚
    日本眼科學会雜誌 101(8), 633-638, 1997-08-10

  • 「青色光吸収眼内レンズの黄斑浮腫発症における予防効果」
    第108回日本眼科学会総会(2004,4,東京)
    塚原正彦・山本有希子・植田俊彦・小出良平

国際照明委員会CIEでは

CIEでは、光源によって人体に発生する傷害を10 種類にまとめており(下記にいくつかを列挙)、それぞれに特別技術委員会が結成されています。青色光網膜症についても「TC6-14 青色光による網膜傷害」として設定されており、最初に紹介した照明学会の「LED照明の課題(生体安全性)」は、ここで議論された内容を反映しているようです。

  • 皮膚と目の角・結膜に対する急性の傷害
  • 近紫外放射による水晶体への傷害
  • 青色光網膜傷害
  • 網膜に対する熱的傷害
  • 皮膚の熱的傷害

書籍では

下記の書籍では、めづらしく青色光網膜傷害に関して取り上げられています。青色LEDについては特に掲載されていませんでしたが、青色光網膜傷害の分光作用特性が青色LEDの特性に一致する図が掲載されていました。

  • 「光技術と照明設計 基礎からインテリアデザインまで」
    池田紘一編著 小原章男編著 電気学会 オーム社 2004.05

眼鏡・眼内レンズ、スポーツでの対応は

インチー選手のサングラス

眼鏡やレンズを少し調べてみると、すでに青色光に対処しているレンズは多く販売されていることがわかります。青色光網膜傷害への対応と、青色光が含まれると眼の焦点が合いにくくなる点の2つの面から対処されています。

眼科的にレンズの世界では、青色光は紫外線と同様に有害光として扱われていることには驚きました。

実際に、イチロー選手など有名選手の愛用しているサングラスも有害な青色光をカットしています。

  • サングラスでは紫外線だけではなく青色光をカット
    イチロー選手の愛用するサングラスも有害な青色光を100%カット。
    カールツァイスの紫外線・青色光をカットするサングラス
    SWANSの青色光をカットするサングラスレンズ

  • パソコン用や常用型の眼鏡も青色光をカット
    今やほとんどメガネレンズ・メーカーから青色光をカットするレンズが発売されているのは周知の通りです。

  • 白内障手術の後に入れる眼内レンズにも青色光網膜光傷害や黄斑変性の対策がされています。
    人間の目はある程度青色光をカットする機能を持っているので、眼内レンズも青色光をある程度カットする機能を持っています。

  • 青色光をブロックする注目の栄養素ルテイン(ボシュロム)

まとめ

このように青色光に関する情報を集めてみると、青色光は可視光線の中では特別な光であり、注意を要することが確認でました。国際照明委員会CIEでもその危険性を認識しています。

海外では一部に青色光を採用している光療法器具(いずれもFDA(米国食品医薬品局)未承認)があり、どれもマニュアルには「直視しないでください。」、「見つめないでください。」と書かれています。黄斑変性や網膜傷害の危険性についてはユーザーに何も説明せず販売し、マニュアル中にもほとんど何も書かれていません。直視してはいけない光、見つめてはいけない光で光療法を実施してもよいのでしょうか?医療的な側面を持つ光療法器具に青色光を使用するのは危険行為と言われても仕方ないように思います。

また逆に海外には、青色光の危険性を考慮して、青色光を完全にカットした光療法器具を販売しているメーカーさえあります。少々極端なような気がしますが、メーカーの安全性に対するスタンスの違いが浮き彫りになっています。

光の専門家に聞くと、光はバランスが重要とよく言われます。人間には青も必要だけども赤も必要であり、特定の色に極端に偏るのではなく、自然光の範囲から離れないことが推奨されています。まして傷害の危険性の高い青色光に偏るのはいかがなものでしょうか。

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