夜勤・交代制勤務の睡眠障害・不眠
夜勤は、交替制勤務やシフトワークと様々な言葉で呼ばれます。24時間社会となった現代では、夜勤は特別な職務形態では無くなってきました。人間のもつ生体リズムに対して無理な労働を行っているわけですから、夜勤による不調や事故が多くなってきています。
夜勤時間帯中の事故で有名なのが、大変な被害を及ぼしたチェルノブイリ原子力発電所の事故です。人為的な原因による大きな事故は、明け方2~4時に起きることが多いと言われています。なぜかというと、人間の体温が最も下がるのが明け方で、その時人間は一番眠くなる時間帯だからです。その眠気のために人為的なミスが起きやすいと言われています。
夜勤を行っている方は、どうして日勤に比べて事故が発生するリスクを多くはらんでいるわけですから、職場での安全管理とともに、自己管理も欠かせません。しかしながら、人間のもつ生体リズムに逆らって作業を行うわけですから、その調整を継続していくことは容易ではありません。働く環境のシステム全体の整備が第一の課題となります。
光療法では、体温低下による眠気のピークがくる時間帯以前に、高照度光を照射すると、体内時計を遅れさせることができ、体温最下点が後ろにずれることにより、眠気のピークをずらせることができます。また、帰宅後は、眠りに眠りにつき易くなりリラックスできると言われています。
この光療法の原理を応用して、夜勤環境を2500ルックス以上に保つシステムも開発されています。実際に、米航空宇宙局(NASA)や、発電所、石油精製所など、24時間勤務の職場で採用されている場合があります。また、それ程大がかりな設備を必要としない場合は、高照度照明器具を使って眠気をコントロールすることが行われている場合もあります。
日本睡眠学会での発表の中では、眠けの起きる時間帯と生体リズムを考慮すると、3交代よりも2交代の方が身体の負担が少なく、事故や不調を防ぎやすいという発表もあり、興味を引きました。
夜勤や交代制勤務とうつ病
また、夜勤や交代制勤務はうつ病との関わりでも、大きな危険を秘めていることがデータで報告されています。
亀井雄一氏(国立精神・神経センター)の文献 「気分障害における睡眠異常とその治療」によれば、夜勤や交代制勤務の経験が、
- 5年未満の勤務者の場合、うつ病の有病率が5%以下であるのに対し、
- 5年以上続けた勤務者の場合では、30%近くまで急上昇する
という驚くべきデータが示されています。
これはいったいどうゆうことでしょうか?
亀井氏によると、夜勤や交替制勤務を行っている方は、その勤務形態の性質から、どうしても慢性的な睡眠不足状態にある場合が多くなってしまう。そのため、睡眠不足が長期にわたって継続すると、睡眠不足そのものがうつ病を引き起こす危険因子となると説明されています。
睡眠障害とうつ病との相関については、最近特に叫ばれていることですが、夜勤や交替制勤務においても、このことが顕著に現れていることがわかります。したがって、うつ病対策としても、繰り返しになりますが、働く環境のシステム全体の整備が第一の課題となり、自己管理を徹底して行い、光療法などを利用して、できるだけ上手く睡眠をとる工夫が必要となってきます。