うつ病に光療法が有効であることが実証!
長く議論となっていましたが、生体リズムを改善することによってうつ病が改善することが実証され、生体リズムを整える光療法がうつ病に対して有効であることが明確になりました。
これは、越前屋 勝氏(秋田大学医学部神経運動器学講座 精神科学分野)が、医療雑誌である「睡眠医療 Vol.2 No.1 2007」の「特集 うつと睡眠をめぐって」において、他の研究者達が実証したことを総括されておりました。
科学や医学の新しい発見というものは、一つの実験だけで証明されるわけではなく、別の方による追試や、他の角度からの検証等が行われ、その信憑性が高まってやっと証明されるというプロセスを取ります。
越前屋氏の「特集 うつと睡眠をめぐって」では、断眠療法と光療法の2つの治療法について紹介しています。そして光療法の説明部分で、最近行われた新しい研究結果を紹介することにより、光療法のうつ病治療への有効性が明確になったことを紹介しています。
- Kripke氏とMartiny氏によるそれぞれの研究成果を紹介
- 最近行われた2種類のメタアナリシス(注)のそれぞれによって、光療法がうつ病治療に有効であることが判明したことを紹介。
注: メタアナリシス: 過去に行なわれた複数の研究結果を統合し、より信頼性の高い結果を求めること、またはそのための手法や統計解析のこと。(ウィキペディアより抜粋)
このようないくつもの角度からの検証結果より、光療法がうつ病治療に対して有効であることが実証されたわけです。
補足情報としてあげると、日本では行政レベルでも、「睡眠障害とうつ病は双方向の相関関係がある」ことが、疫学を通して証明されており、光療法で睡眠障害を改善してうつ病を改善することができる可能性を示していました。
また、うつ病のメカニズムの有力な仮説としてHP Axisの機能不全が指摘されていますが、その大元になるのが体内時計による概日リズムです。つまり、光療法の最も得意とする治療分野です。
今回、有効性が実証されたことは、非常に静かに文献に掲載されていたので気がつきませんでしたが、これは大変な社会的貢献です。なぜなら、現代という時代はうつ病の人が激増しており、自殺者も増加の一途をたどっているわけで、その中で新しい治療法が確認されたことは大きな成果であることに間違いないためです。
特にこの実証結果の優れているところは、光療法が抗うつ薬等の他の治療法と併用出来る点にあり、相乗効果を出しながら治療出来ることです。うつ病というのは難治性の病気なので、それに対してより効果を発揮できる方法が加わったことは、大変な進歩であると言わざるを得ません。