NHKためしてガッテン「熟睡4鉄則、睡眠力がよみがえる」
皆さん、「睡眠力」という言葉をご存知ですか?
最近、聞かれるようになった新しい言葉です。
この新しい言葉をテーマに、2009年5月27日のNHKためしてガッテンで、「熟睡4鉄則、睡眠力がよみがえる」という番組が放送されました。
番組: NHKためしてガッテン「熟睡4鉄則、睡眠力がよみがえる」2009.5.27
内容的には、高齢者向けの不眠・睡眠障害対策でした。高齢になると、昼間の活動量が減って活性度が下がり、その影響で夜の睡眠の質が悪くなります。これを「睡眠力が低下してくる」と説明されていました。
この高齢者の睡眠力の低下は、早い方では40歳代からも見られるそうですが、多くは退職以降の年齢からのようです。症状は、簡単に言葉で表すと、よく言われる不眠・睡眠障害の症状と同様です。
- 寝つきが悪い。
- 夜中に何度も目が覚める。
- “超”早起きになる
- 眠りが浅い。
番組では、これらの症状に対して、過去の番組で放送した内容も含めて全体的な解決策を紹介していました。
睡眠力の低下という言葉を使っていましたが、基本的は年齢と共に崩れやすくなる生体リズムを整えるという内容に尽きるものでした。
睡眠力の回復法
寝つきが悪い
高齢者の場合、夕方に眠ってしまう方が多く見られますが、これにより夜の睡眠に悪影響を与えてしまいます。番組では、これを回避するために、敢えて昼食後に30分以内の短い昼寝をすることを薦めていました。30分以上寝ると逆効果になるので要注意です。
これにより、昼寝から起きた後から寝るまでの時間を長く保ち、身体の活性度を高く維持しやすくなりますので、その反動で寝つきが良くなるわけです。
これは高齢者でなくても誰にでもあてはまります。
ビジネスマンの方などには、疲労やストレスを軽減するためにお薦めしている実践的な方法でもあります。
夜中に何度も目が覚める
また、夕方に30分程度の運動をすることにより、夜中に何度も目覚めることを防ぐ効果があることを紹介しておりました。以前に番組でも紹介された内容です。
これは後述の眠りの深さと関連していますが、夕方から下がり始める覚醒度や深部体温を、運動することにより高く維持し、その反動で夜の睡眠を深くするものです。
“超”早起きになる
これは、元々早起きの人が早朝に光を浴びると更に早起きになってしまうことの紹介でした。その人の症状によって光を浴びる時間帯を変えなければならないということです。
つまり、早起きの人は朝光を浴びるのではなく、夕方に光を浴びることによって体内時計を遅らせ、”超”早起きになることを防ぐというものです。
夕方に散歩を行えば、上記の運動効果と夕方の光の効果により、寝つきが良くなり、”超”早起き防止の両方の効果があるという説明でした。
光療法では、高齢者の不眠対策として、夕方に光を浴びることは常識的な事なのですが、以前の番組放映では、一般向けに「朝起きたら光を浴びる」という点だけを紹介していたので、その修正ということで盛り込まれていました。
少々説明不足と感じたのは、夕方の時間帯に光を浴びるには高照度が必要な点です。夏の時間帯には夕方の散歩でも強い光が浴びられますが、冬場では無理です。さらに、冬場の散歩は高齢者には身体を冷やす可能性もあります。したがって、室内での運動や高照度照明を使って光を浴びる方法を検討する必要がでてきます。
眠りが浅い
これは、身体の深部体温が低くなると深い眠りを得やすいという事実に着目して、積極的に深部体温をコントロールするというアプローチの紹介でした。
具体的には、入眠の1,2時間前に風呂に入ります。40度くらいの半身浴で身体の深部まで暖めます。そうすると、風呂から上がると徐々に深部体温が下がってくるので、身体が眠りの方向に誘われて深い睡眠を得やすくなるということでした。
本来の生体リズムから説明すると、昼間の覚醒度や活性度が十分であれば、夕方に深部体温が最高点に達し、それから徐々に下がってきて自然に眠くなり深い睡眠を得やすくなるという仕組みなので、その流れを入浴後の深部体温低下によって積極的に導いてあげるというアプローチです。
ただ、番組では何も注意点の説明がなく、「40度くらいの半身浴」という表現に止められていた点が少々気にかかりました。それは、風呂に入れば深部体温を一度は上昇させるわけです。つまり、身体を覚醒の方向に持って行くということに触れなかった点です。
「40度くらいの半身浴」という表現の裏に、熱いお湯に首までつかって身体を温め過ぎると十分に身体を覚醒させてしまうので逆効果になる、という意味が隠れています。ですから、風呂に入っても身体を温めすぎないことが重要ポイントになり、それが「40度くらいの半身浴」という一言で説明されていたので、この点には注意してください。
本質的には生体リズムの活性化が重要
番組で紹介された方法は、高齢者の不眠・睡眠障害対策としてはひじょうに有効だと思います。しかし、本質的なポイントを理解しないで、対処法だけに注目しても、十分な効果を得られない場合もあるかと思います。
睡眠力の低下の本来の原因は、加齢により身体の動きが弱くなったり、活動量が不足したりして、生体リズムの活動を健全に維持する力が弱くなることにあります。
このポイントに焦点を当てれば、本質的には昼間の活動量を増やすことが重要になるわけです。昼間の活動量を増やすには、人により異なりますが、一般に言われることとしては、趣味を持って活動する、社会活動に参加する、運動する生活習慣を取り入れる、介護が必要な方の場合はデイサービスなどを積極的に利用する等々が上げられます。
これらに焦点をあてた生活活動を行った上で、番組で紹介された方法を補助的に取り入れることが、睡眠力を回復して健康的な生活をおくる近道かと思います。