アルツハイマー型認知症患者の認知機能と睡眠・覚醒に及ぼす光療法の影響
アルツハイマー型認知症と光療法に関する報告が多いのには驚かされます。
認知症に対して光療法がどのように効果を発揮するかが徐々に明らかになり、
介護面での負担を軽減できる可能性が高いことには期待が持てます。
情報元 | 当委員会のコメント |
---|---|
日医大誌1999第66巻 (PDF) 「アルツハイマー型痴呆患者の認知機能障害に対する高照度光療法の影響」 伊藤敬雄氏, 山寺博史氏 日本医科大学精神医学教室 |
原文がインターネットに公開されている唯一の文献です。 高照度光療法は、各種の報告から、アルツハイマー型認知症に対して、睡眠・覚醒リズムの睡眠障害改善効果があることが認められていることがわかっています。ところが、高照度光療法が認知機能障害の諸症状そのものに対する有効性について研究された報告は見あたらないため、それを検証することを目的に実施された文献です。 一般人にとっては、とても難解な文献であるため、最後の結論部分を要約させていただきます。
これらの結論をみても、CDR, MMSE, ADASという言葉の意味が十分説明出来ていないので、なかなか感覚的な結論として捉えにくいとは思いますが、筆者なりにまとめますと、高照度光療法によって、アルツハイマー症状の進行は止まらなかった。しかし、睡眠・覚醒リズムが改善することによって、その時点での認知機能障害の諸症状そのものに対する有効性が認められたということではないでしょうか。かなり大ざっぱなまとめかもしれませんが、そのように読み取れます。 あと重要な点は、この文献は光療法がアルツハイマー型認知症に対して睡眠・覚醒リズムの睡眠障害改善効果があることが認められている、というところから出発していることです。この点は非常に大きなポイントで、既に有効性が認知されているわけです。 つまり、睡眠・覚醒リズムが改善すると、夜の徘徊が改善され介護負担が大きく減少します。介護負担が家族や周りの人の不幸を招くことが多い中で、光療法を積極的に取り入れていく意味は大変大きいと感じます。
|
第15回 日本老年精神医学会
演題抄録 日本睡眠学会抄録 O 1-2
|
上記の日医大誌1999第66巻の内容が、簡潔に要約されています。 |
日本睡眠学会抄録 B-10
|
光療法とビタミンB12を併用することによる効果を調査した内容で、ビタミンB12により特に日中の覚醒度が上昇し,ADAS非認知機能評点(行動領域>精神症状領域)において改善が認められたという結果が報告されており、相乗効果に期待されることが示されています。 |
Medical Tribune |
光療法が、痴呆患者の多動や夜間の徘徊に改善効果があることから、特に介護面で有用性が高いと期待されています。 |
アルツハイマー病 安江清彦 |
札幌市の札幌花園病院の香坂雅子副院長(現在は石金病院勤務)が、北海道大学精神科と共同で、光を利用し痴呆老人の夜間徘徊防止やうつ病治療に取り組んだ症例が紹介されています。 高照度光照射療法を二十人を超える患者に実施したところ、効果に強弱はあったが、大半の患者で概日リズムを取り戻し、夜間の熟睡傾向が強くなり、夜中に起き出したり、徘徊したりすることが治まる傾向が認められたことが報告されています。 私見になりますが、本人が不眠の苦しみから解放され、介護負担の大幅な軽減が期待できると思います。 |