「季節性うつ病」 ノーマン・E. ローゼンタール著
既に廃刊になっていますが、「季節性うつ病」(講談社現代新書、ノーマン・E. ローゼンタール著)という本があります。
冬季うつ病に多くのページがさかれいるものの、それだけにとどまらず、季節にかかわるすべてのうつ病の症例がものすごく多数紹介されている名著です。
1992年に翻訳して発行されているにも拘わらず、その症例の豊富さ、驚くほどの症状の多様性、対処方法等、その内容の深さと幅の広さには圧倒されました。
私に知る限りでは、これほど冬季うつ病を含めて季節性うつ病について述べられている書籍を見たことがありません。冬季うつ病や、季節によって不調をきたす方には、大変勇気づけられる内容の本ではないでしょうか。
1992年に書かれているので、現在では解明されていることが仮説的に書かれているか箇所もありますが、それらが現在までの研究成果にほぼ一致しています。最新の研究と昔の研究では、その解明手法の詰めの厳しさがまったく異なるにも拘わらず、内容が適確であることに驚くばかりです。
また、光療法だけで十分な効果が得られない場合、現在では抗うつ薬を用いるのが一般的です。しかし、この本によると、光療法に加えて、身体を暖かくすること、継続的にできる運動を行うことが有効であることが示されており、新たな対処方法を学ぶことができました。さらに、非季節性のうつ病に有効である断眠療法を冬季うつ病でも試してその効果まで言及されており、内容的に全く古さを感じませんでした。
廃刊になっているため、当時600円の本が、Amazon.comなどではプレミアがついてかなり高価になっているようですが、図書館の蔵書として扱っているところもあるので、探してみてはいかがでしょうか。大変お薦めの一冊です。